震災物件2 五代目源右エ門 of New Site 0


(有)五代目源右エ門

2011年以降の施工実績と近日の施工予定(2019年11月更新)

「親父が建ててくれたこの家で、家族と暮らす」

塩釜市 K邸 不陸調整工事

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外壁のALCに残る、津波の跡。宮城県の塩釜市は、地震による大きな揺れに伴う地盤沈下・不等沈下に加え、直後の津波という2重の被災に見舞われました。
こちらのK邸は、家の建築時に大潮対策をかねて道路面より1mの盛り土を施し、かつ、軟弱地盤対策として直下に26mもの杭を打ち込んでいたにも拘らず、地盤が1m沈下したうえに敷地内で305mmもの不等沈下が発生。その状況での津波襲来だったため、家はなすすべも無く床上浸水(周囲の家は天井まで水に浸かったそうです)。

「親父が建ててくれた大事な家だ。また家族で住めるように直したい」と、家族を安全な高台の町に避難させつつ、自身はこの家の2階で1人寝泊りしながら、お知り合いの設計士さまの協力を得ながら、連日、日本中の曳家業者・地盤改良業者に見積もり依頼。その数実に11社にも及んだそうです。「家を留守にすると、夜のうちに泥棒が入ったりするんです。絶対この家に住み続けて、家を守らなきゃ、って思ってました」

各業者から出されたプラン・金額はご主人の理解を超えていました。電話では「300万円で地盤改良でok!」といっていた業者に、実際に現地で見積もりしてもらうと「追加を含めて1000万円くらいですね」と言われたり、他社からは「これは一度空き地へ曳いて、基礎工事をやり直して戻し曳きする必要があります。1500万円です」だったり、中には2000万円を超える見積もりも。いったい何が本当なのかまるでわからない。いくらなんでもそんなにお金をかけられない。そんな中で私たちにも声がかかりました。

様々なデータや意見収集から、「この家は幸いにも下げ止まりが期待できる。なにより、この地盤と環境では、どのような修復工事を施しても、得られる結果は大差が無い。」と判断。であれば、最も安価で工期も短い「土台上げ(プッシュアップ)」で充分なのでは?と我が社は提案。その内容で金額を提示。その価格にご主人が驚きます。「他社はこの工法を一言も口にしなかった。こんなに安くて同じ結果が得られるなんて何故?」私たちは答えます「少しでも確実性を求めるなら1000万円・1500万円・2000万円という工事は意味があります。しかし、今回は対投資効果があまり得られないと思われます。業者というものは往々にして、自社にとって一番得意な工事や、または利益率の高い工事をお勧めしたがるものです。私たちにとって一番の得意な施工方法は土台上げ工法であり、今回の事例に対してはお勧めできる工法です。」と説明。設計士さんの後押しもあり、施工に至りました。

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基礎内部に入り込んだヘドロの除去のため、1階の床の何箇所かは床板が撤去されていました。そこから内部へ入り、ジャッキセット。外周はそのままジャッキの大きさだけハツリでジャッキセットです。ハツリ準備に2日。ジャッキアップに2日。微調整に1日、と僅か5日で水平を取り戻しました。

水平を取り戻した夜、ご主人は「何ヶ月ぶりだろう。朝まで熟睡できました!」と大喜び。聞けば、傾いた床の上で寝ていると、寝返りをうっただけで気持ちが悪くなる、それほどの傾きに耐えながら5ヶ月寝泊りされていたそうです。「それが数日で解決するなんて!もっと早く頼めば良かったなあ」と嬉しいお言葉。






さて、通常はライナーとモルタル程度で修復可能な立ち上がり基礎も、305mmも持ち上げたならば、当然補強しなくてはいけません。

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鉄骨ライナーをセットし、このあとさらにリブ補強。加重のかかる軸組み部分を中心に補強を加えつつ、既存基礎とアンカーを鉄筋溶接。外周だけでなく内部にも同様の工事を施します。

内部では大工による束の調整も同時進行。床下が広々ですので作業も楽々です。

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玄関は300mmも上がってしまったので、このあと地元工務店様に整備を依頼。
この玄関ポーチというのが意外とクセ者で、いわばコンクリートの塊ですから当然重い。
これを機に「お父様の将来を考えて、いったんこの玄関ポーチは撤去して、軽量で使いやすいスロープ構造に改造されてはどうでしょう」と提案させて頂きました。

このあと、左官工事・大工工事・水道工事、を経て、いままで同様の暮らしを取り戻すことが出来ると思います。完成が楽しみです。







ちなみにご主人は塩釜でタコの加工の会社を経営されており、

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連日、とても美味しいタコをじはじめ、いろんな海の幸を食べさせてくれました。
我が社の社員はすっかり太り、後ろ髪をひかれつつ塩釜をあとにいたしました(笑)。